芸術見聞録

展覧会の予習、感想など。

芥川龍之介を偲んで その1

NHK、Eテレの番組、「高校講座ベーシック日本語」を見て、「田端文士村記念館」というものの存在を知ったので尋ねてみた。

NHK高校講座 | ベーシック国語 | 第5回 文学史〜芥川龍之介〜

田端の町は図書館などを利用するために何度か訪れたことはあったが、ここが作家、美術家の一大中心地であったことは寡聞にして知らなかった。

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この記念館が出来たのはおそらく、近藤冨枝著(昨年没)の田端文士村 (中公文庫)に負うところが大きいのだろう。(記念館では10月1日まで近藤氏の取材ノートなどの展示が行われている。)田端文士村記念館 記念館を訪れる際には事前に一読することをお勧めする。瞬く間に興味が湧いてくるだろう。

無料だけあって展示はささやかなものだが、それでも芥川龍之介室生犀星萩原朔太郎など作家の自筆の手紙などがある。「田端文士村」の本で小さく載せられている写真や絵の実物があり、登場する人物の写真もあるので、この本を補足する格好だ。

昔の作家の作品は学校で使うような作文用紙に丁寧に書かれていて、見ていると自分でも何か書けそうな気がしてくるが、ここに展示してあるのは現代の作家が及ばない才能の持ち主ばかりなのだ。

ここの目玉は芥川邸を再現した精巧な模型である。「高校講座」では特殊なカメラを持ち込んで撮影したため、芥川の部屋は大きく見えるが、実際はかなり小さいので驚いた。当時の田端ののどかな雰囲気が感じ取れる。

展示には昭和2年の芥川自殺を報じた新聞記事の切り抜きもある。当時かなりショッキングな事件だったことが見て取れる。親交のあった小穴隆一の描いた死後の芥川の顔を描いた絵もある。

小穴の描いた芥川の死に顔を手に取ると、それはすばらしい傑作だった。すくなくとも小穴が平常いかに芥川を見ていたかがわかり、その優しい弱り方をそっくり写し上げているところに、手腕と真実さがあると犀星は思った。

 (近藤冨枝「田端文士村」240頁より)

芥川龍之介というと、自殺した人ということもあり、なんとなく敬遠してきたのだが、この「田端文士村」を読むと、世話好きで社交的、人を辛辣に批評することはあったが、声を荒らげたとかいう話は一切ない。玄関に「忙中謝客」と貼ったものの、訪問客を断り切れない人の良い所もあった。

今芥川の作品を読んでみると、学者並みの知能と豊かな想像力、ユーモアのセンスを兼ね備えた稀有な人で、天才という他ない。(日本人は何か優れた人を見るとすぐ「天才」と言うが、そうそう天才がいてたまるか・・である)

「どうして死んでしまったのだろう?」という言葉が、何度も何度も頭の中をよぎる。

 

奉教人の死 (新潮文庫)

奉教人の死 (新潮文庫)

 

 今読んでいる本。活字も大きくなり、注釈も親切でかなり読みやすい。切支丹を題材にしたのは遠藤周作が初めてだと思っていたが、遠藤も芥川を範としたわけだ。