芸術見聞録

展覧会の予習、感想など。

シャセリオー展の感想 その1

北朝鮮からミサイルが飛んでくるかも知れないという時に、美術館めぐりとは我ながら呑気だと思うが、上野公園も平日だというのに結構な賑わいであった。

シャセリオーが日本人に馴染みがないせいか、会場は空いており、マナーの悪い人もおらず、気分良く鑑賞できた。

例によって、世界各地から集められた一人の画家の絵を一度に観ることができるという贅沢な展覧会。今のニッポン、生きていてもあまり良いことも無いが、現代に生きる特権というのもやはりあるのだ。

シャセリオー展に行った方々のインスタを見ていたら、シャセリオーの肖像画を観て涙を流されたという方がいて、その感受性の鋭さに驚いた。(その絵は一番初めに目にする絵で、その方はいきなり号泣したわけである)その方に「放蕩息子の帰還」が印象的だったと返答をいただいたのでじっくり観てみた。

良く目を凝らしてみると息子の目から涙が出ている。確かにこの親子の感情がこちらにも伝わってきて、「悪い奴だが許してやろう」という気になる。おまけに画面左下の犬まで「許してやれよ」という目をしている。シャセリオーは馬を好んで描いているが、よく見るとその表情も意味ありげだ。

ロマン派というのは人間の感情や内面の表現にこだわったのだが、私が思うに、シャセリオーは動物の感情まで表現しようとしたのだろう。彼は母子像を数多く描いており、優しい人だったのだなと思う。肖像画を観て泣いたという方は一目で画家の本質を読み取ったのだ。女性ならではの感性なのだろう。シャセリオーも悪い女に引っかからなければもっと幸福になれたかも知れない。

 

芸術新潮 2017年 05 月号

芸術新潮 2017年 05 月号

 

 シャセリオーの凄さはそのデッサンにも表れている。彼の場合デッサンは習作ではなく、すでに作品と言っても良いのではないだろうか?というのは女性の顔にその感情、内面がすでに表れているのである。こんなデッサンは見たことがない。この点、デッサンの名手と言われた、師、アングルのものとは明らかに異なる。

つづく。 

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