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芸術見聞録

展覧会の予習、感想など。他に時事問題のブログもやってます。http://hayanosuke.hatenablog.com/

ティツィアーノとヴェネツィア派展

以下は「Art Agenda」というサイトに私が投稿した文章です。

モンゴメリの「赤毛のアン」の中に、朗読の舞台に立ったアンを見たある青年画家が、「あの素晴らしいティツィアーノの髪を持つ少女は誰だろう」と言い、それを聞いた親友のダイアナが、「ティツィアーノの髪って何?」とアンに尋ね、「たぶん赤い髪のことじゃないかしら、ティツィアーノは赤い髪の女性を好んで描いた有名な画家なの」と答える場面がある。 


「有名な画家」どころではなく、ティツィアーノは西洋絵画の巨人であり、その影響は印象派から表現主義に及ぶと言われ、画家の王子とも称される存在である。しかし「ヴェネツィア派」とは何だろう?と私は思い、宮下喜久朗著、「ヴェネツィア 美の都の一千年」(岩波新書を展覧会に行く前に読んでみた。

 

ヴェネツィア――美の都の一千年 (岩波新書)

ヴェネツィア――美の都の一千年 (岩波新書)

 

 新書なのに綺麗なカラーの絵が沢山入っている。印刷技術も進歩したものだ。これを読んで「ヴェネツィアがローマ、フィレンツェと並ぶ美術の一大中心地」であったことを初めて知った。その宮下先生に、この展覧会で直々に本の内容を解説していただけるというので、その日に合わせて出かけてみた。 


宮下先生の2月19日の講演は整理券配布にたちまち行列ができるほどの盛況で、ヴェネツィアの魅力が十二分に伝わる、楽しいものだった。その中で、先生がティツィアーノの絵はできるだけ目を近づけて観ることをおすすめします。」とおっしゃったので、(講演会に参加した人は一度退出しても、再入場できるという粋な計らい。)そのようにしてみるとなるほど、肌の色の微妙な色の変化、単なる職人仕事ではない、天才の手による繊細な筆のタッチが見て取れる。グーグルアートや画集で見るのもいいが、やはり実物の迫力に遠く及ばない。これが「スフマートか!」と思わず口に出してしまいそうになる。「線画を重視するフィレンツェ派に対して、色彩を重視するヴェネツィア派」が、西洋絵画において屹立した存在であることが伺える展覧会である。

最近の展覧会は一つのテーマで複数の美術館から絵を集めて展示するという恐らくは日本ならではの贅沢なものが多い。この「ティツアーノとヴェネツィア派展」もその一つで、ヴェネツィアは勿論、フィレンツェナポリヴィチェンツァの美術館から集められている。これだけの美術館を実際周るとなると大変で、東京で一同に観ることができるのは大変ありがたいことである。